『このたび、めでたく孤立しました。』
特許事務所をはじめて19年になりました。たまには振り返ります。
2000年に「森下国際特許事務所」としてスタートしました。それまで産学共同のシンクタンクにいました。しかしそこが諸般の事情で立ち行かず、当時の社長から「きみは資格があるから、どこかで食ってくれ」と言われました。
特許事務所を探しました。しかし、とんでもない夜型(むしろ一周まわって朝型)の私は、社会適応性が低いのです。内定をもらった事務所の所長に連れられ、飲みに行ったとき、勇気を出して聞きました。
「朝は何時からですか?」
「9時だよ、聞いていない?」
「いや、聞きました・・・。全員ですか?」
そのとき、所長さんがギロリと睨んだ目を忘れません。
・・・おまえ、何言っているの??
ですよ。こわ。
だけど、何時に働こうが、結果を出せばいいじゃないですか(急に正論めく)。
結局、入れません。ふたつめも、みっつめも。。
そんなとき、尊敬するロシアの先生から、
「森下、これを産業化してくれ」
論文が来ました。考えてみれば(考える必要もないけど)、そんな仕事、ふつうの特許事務所ではできません。腹をくくりました。
「いいや、自分でやるかッ」
それがこの事務所のきっかけです。朝から働けないというのが本当の理由ですから、多少自虐的になり、懇意にしていた仲間たちに、
「このたび、めでたく孤立し、特許事務所を開設しました。」
と伝えました。
誰ひとり、「孤立」を突っ込んできませんでした。
いまも昔も、優しさに溢れた仲間たちに囲まれています。